重粒子線によるガン治療



今日の話は、先進医療によるガン治療の実際である。

放医研の重粒子線治療棟(HIMAC)に行って、実際の研究者さんにインタビューしてきた。ここは団体組織としてアポすれば、内部を見せてくれる。年に1回の一般公開日でも見れるが、インタビューするのは時間的に難しいかもしれない。

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[HIMAC]

ガン治療にはX線照射、陽子線照射、化学治療、外科手術があるが、新しく重粒子線の方法が広まりつつある。


X線やガンマ線はガン組織より前や後ろにある組織も痛めるし、ガン細胞に10のダメージを与えるまでにガンより前面の細胞には100のダメージを与えてしまう。
そのため照射エネルギーをあまり強くできないので、ガン細胞を温存してしまい転移を起こしてしまう。

重粒子線ではガン組織に到達するまでの周辺細胞にはダメージを与えず、ピンポイントでガンを壊すことが可能である。これをブラッグピークという。

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[ブラッグピーク]



外科手術はガン細胞を直接見ることが出来るので、間違ってガン細胞以外を除去することは少ないのだが、欠点は手術による欠損はまぬがれない。具体的には眼底のガンでは眼を除去するので片目は見えなくなる。乳ガンでは乳房の内部を除去するので、乳房の形は大きく損なわれる。

これも重粒子線を使えば、組織を失うことが無いので術後の復帰が極めて良好になる。

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[肺ガンへの照射後の経過]


ただ重粒子線にも欠点はあって、あくまでCTスキャンやPET画像を元にしてガンの位置を割り出しているので、錯誤でガンでは無かったということも考えられる。またガンが体内の一点に固まって存在しているというイメージなので、胃がんやメラノーマのように器官の表層に薄く広がっているとか、蠕動運動で常に形が変形しているものは苦手である。

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【重粒子線】
炭素は陽子6と中性子6から成りたち、質量数は12である。そこで炭素源としてメタンガスを使って重粒子線の作り方を説明する。

まずメタンCH4の水素を2個除去する。これでCH2(2+)のイオンになる。次に少し加速したうえで偏向磁石を使って、酸素など質量の似通った原子を除去する。
水素をすべて除去するとC(4+)のイオンになるが、まだ電子が2個付属している。


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[イオン源生成装置]


この炭素C(4+)を、線型加速器アルバレで光速の1/10(6MeV)に加速し、電子を除去してC(6+)にイオン化させる。次に二重リング-シンクロトロンで800MeV(光速の84%)まで高エネルギー化させて炭素イオンの高速重粒子線に転換する。

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[シンクロトロン(模型)]


イオン源としてC、Fe等も研究用に使うが、炭素に特化することでシンクロトロンは超小型化が可能になる。放医研の汎用機はサッカー場ほどの広さを持ち、地下三階地上五階までの巨大な施設であるが、超小型シンクロトロンでは体育館サイズまででおさまる。これは重粒子線治療が研究所レベルから、病院レベルに実用化できるということになる。

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[ビームの収束のための超電導四重極磁石]



※シンクロトロン
シンクロトロンとは、磁場と加速電場の周波数をコントロールする事によって、高いエネルギーまで粒子を加速する円形加速器の一種。2016年現在、もっともできるシンクロトロンは、CERNの大型ハドロン衝突型加速器(LHC)であり、陽子を7TeVまで加速する事ができる。

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【コリメータとボーラスの作成】

高速に加速した重粒子線は、そのままではレーザービームのように収束しているので、ビームを拡大する。拡大するのは簀の子状のリッジフィルターを使う。このフィルターをすり抜けた粒子と散乱した粒子を合わせることでビームを拡大することになる。


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[リッジフィルター]


次にガン組織の大きさに合わせたコリメータとボーラスを作る。これは患部の位置やサイズによって形が違うのでひとつひとつ作ることになる。

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まずコリメータだが、これは真鍮を削って作る。この金属コリメータによって患部組織以外には重粒子線が当たらないことになる。

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[コリメータ]


次に重粒子の到達する距離に合わせて患部の形に合わせてポリエチレン樹脂でボーラスを作成する。ボーラスをきちんと作ればガン組織が複雑な形であってもガン組織以外の部分には傷を付けないようになる。

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[ボーラス]


コリメータとボーラスはガン組織が小さくなることもあるので、患者個人の使用でも毎回作り直しになる。これだけでも膨大な経費が掛かる。

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【照射】
さてコリメータが出来たところで、患者はいよいよ重粒子を浴びるわけだが、ここでまず体に柔らかくしたプラスチック板を貼り付けて型取りをする。次に患部の前にコリメータとボーラスを設置する。この位置決めの時間が18分くらいかかり、重粒子を当てている時間が2分として約20分が治療時間になる。

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またこのようなコリメータを使わずに、収束ビームのままガン組織をスキャニングする方法も2011年より実用化してきている。

以上の重粒子照射が1~2回でガンを根治できたという例もあるが、12回くらい照射したという場合もある。12回照射したも、治療期間は3週間なので短期間に治療は完了する。



この重粒子線治療は先進医療扱いになるので、照射回数に関係なく全部で314万円かかる。これは100%患者負担になる。

先進医療以外の部分、診察費・検査費・入院費・薬代などは保険適用になるので30%が患者負担になる。

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ここを勘違いする人が多いが、病院では歯科治療のように自費治療と保険治療を混合することはできない。
自費治療なら診察も検査もすべて自費でやるしかなくなる。未承認の制ガン剤を使おうとして自費治療にしたら1000万を超えたということも普通にある。


ところが先進医療として認められた治療では、
先進医療費(10割負担)と保険医療費(3割負担)を混合することが可能になる。314万円が高いか安いかはおいて、自費治療よりは安くなる。


最後に、以前に放射線治療を行った場合は重粒子線治療の適用外であるとパンフにはあるが、これは一般論であって、実際には
重粒子線治療が出来るかできないかは患者一人一人の状態によって異なるので、適用外かどうかは治療相談の上で決めてゆく
ので、門前払いをするものではない、まずは相談を。という回答であった。


まぁ314万円の件はアフラックにでも入っておくんですね・・・


JIMMY

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