死せる英雄の魂の声


これはVoices of Spirits of the fallen heroesの邦語訳です。
原題は『英霊の聲』(三島由紀夫著)です。
ただ英霊という書き方をすることで、色眼鏡がかかり、本題の趣旨とは異なる見解になるので、あえて別の訳にしました。


[マックス・ブルック/コルニドライ]

01_l2s-DHL.jpg
[英霊の聲]

「かけまくもあやにかしこき
すめらみことに伏して奏(まお)さく
今、四海必ずしも波穏やかならねど、
日の本のやまとの国は
鼓腹撃壌(こふくげきじょう)の世をば現じ
御仁徳の下、平和は世にみちみち
人ら泰平のゆるき微笑みに顔見交わし
利害は錯綜し、敵味方も相結び、
外国(とつくに)の金銭は人らを走らせ
もはや戦いを欲せざる者は卑劣をも愛し、
邪(よこし)まなる戦のみ陰にはびこり
夫婦朋友も信ずる能わず
いつわりの人間主義をたつきの糧となし
偽善の団欒は世をおほひ
力は貶(へん)せられ、肉は蔑(なみ)され、
若人(わこうど)らは咽喉元をしめつけられつつ
怠惰と麻薬と闘争に
かつまた望みなき小志の道へ
羊のごとく歩を揃へ、
快楽もその実を失ひ、信義もその力を喪ひ、
魂は悉(ことごと)く腐蝕せられ
年老いたる者は卑しき自己肯定と保全をば、
道徳の名の下に天下にひろげ
真実はおほひかくされ、真情は病み、
道ゆく人の足は希望に躍ることかつてなく
なべてに痴呆の笑ひは浸潤し
魂の死は行人の顔に透かし見られ、
よろこびも悲しみも須臾(しゅゆ)にして去り
清純は商われ、淫蕩は衰え、
ただ金よ金よと思いめぐらせば
人の値打は金より卑しくなりゆき、
世に背く者は背く者の流派に、
生(なま)かしこげの安住の宿りを営み、
世に時めく者は自己満足の
いぎたなく鼻孔をふくらませ、
ふたたび衰へる美は天下を風靡(ふうび)し
陋劣(ろうれつ)なる真実のみ真実と呼ばれ、
車は繁殖し、愚かしい速度は魂を寸断し、
大ビルは建てども大義は崩壊し
その窓々は欲求不満の蛍光燈に輝き渡り、
朝な朝な昇る日はスモッグに曇り
感情は鈍摩し、鋭角は磨滅し、
烈しきもの、雄々しき魂は地を払ふ。
血潮はことごとく汚れて平和に澱み
ほとばしる清き血潮は涸れ果てぬ。
天翔けるものは翼を折られ
不朽の栄光をば白蟻どもは嘲笑ふ。
かかる日に、
などてすめらぎは人間(ひと)となりたまひし」
『英霊の聲』(三島由紀夫) 


私たちは今の繁栄と挫折の中で、英霊の声を反芻してみたとき
その魂を失った抜け殻の如き繁栄に愕然とする想いがあるのではないでしょうか。
特に、
「外国(とつくに)の金銭は人らを走らせ、」
「ただ金よ金 よと思い巡らせば人の値打ちは金より卑しくなりゆき」
「車は繁殖し愚かしい速度は魂を寸断し、朝な昇る日はスモッグに曇り」

とまで言われると、イヤ中韓ほどではないと自分を正当化してみたところで五十歩百歩の己の浅ましさを恥じ居るばかりです。
比較すべきところはそこでは無いはずです。

安倍晋三氏首相の航空幕僚長田母神俊雄氏のパーティでのスピーチで、三島由紀夫に触れたくだりがあります。



正しいか正しくないかとは別に、これは政治的に持つかどうかという判断があります。しかしそれによって辞職をすることが敗北であるとは言い切れないのです。時には勇気をもって職を賭して命をかけて世の中に警鐘をならすことで時代は正しい方向に動いていくのだろうなと思う所であります。
三島由紀夫の辞世の「たばさむ太刀の鞘鳴りに耐えて」とありますが、田母神さんも同じ気持ちだったのではないかと思うわけであります。(安倍晋三)



ますらおがたばさむ太刀の鞘鳴りに幾とせ耐へて今日の初霜
『三島由紀夫辞世の句』
********************************************************
しかし勇気をもって死を賭して世の中に警鐘をならすことで時代を導いたとしても、まだ判りかねることがあります。
それは、なぜに懇願されたとはいえ森田某を道連れにしなくてはいけないのか、森田某を切腹介錯人として殺人を犯させる必要があったのでしょうか。
刑場の介錯人は刑吏であるが、私人である森田某が介錯をすればそれは嘱託殺人になります。
結果としては、森田某は介錯に失敗し、古賀浩靖(生長の家幹部)が嘱託殺人罪で起訴されることとなりました。

三島由紀夫は永井荷風のような野垂れ死に老人の如き人生を嫌悪していたとも伝えられています。「中央公論」
さればとて、悲劇のヒロインがごとき美しい死を求めたというものです。

坂口安吾が織田信長公のことを述べて、「死のふは一定、しのび草には何をしよぞ、一定かたりをこすよの」という小唄を好んだとありますが、三島由紀夫も信長のような太く短く清廉に生きたいという想いがあったのかもしれません。

しかし若い時はそのようにも考えた時もあるが、歳とってみるとこれはこれで、なかなか面白いものであることも是亦発見です。荷風のようにどこの誰ともわからない瘋癲老人として、野たれ死ぬのもまた悪くないかなと思うこのごろ。

断腸亭日乗 昭和七年三月五日
給仕人の持来る夕刊新聞を見るに今朝十一時頃実業家団琢磨三井合名会社表入口にて銃殺せられし記事あり。短銃にて後より肺を打ち抜かれしと云ふ。下手人は常州水戸の人なる由。過日前大蔵大臣井上準を殺したる者も同じく水戸の士なる由。元来水戸の人の殺気を好むは安政年間桜田事変ありてよりめづらしからぬ事なり。利と害とは何事にも必相伴ふものなり。
昭和の今日に至りて水戸の人依然として殺気を好むは之を要するに水戸儒学の余弊なるべし。桜田事変のことを義挙だの快挙だのとあまりほめそやさぬがよし。脚本検閲の役人は鼠小僧の如き義賊の狂言は見物人に盗心を起さしむる虞(おそれ)ありとて往々その興行を許可せざる事あり。此の後は赤穂義士桜田事変の如き暗殺を仕組みたる芝居も其筋にて興行を禁ずるがよろしかるべし。


02_jss500danchou.jpg
[断腸亭日乗/永井荷風]


JIMMY

最後までおつき合いありがとうございます
タイブログのランキングに参加してます。
下記バーナー↓↓↓を1日1回一押ししてもらえると大変嬉しいです!
            にほんブログ村 海外生活ブログ タイ情報へ
にほんブログ村
スポンサーサイト

非公開コメント

プロフィール

JIMMY

Author:JIMMY
タイの美少女をイラストで紹介したいと思います

音楽の話やイラストの話と
おいしい科学もオヤツにどぞ

LEOも時々訪問してくれます

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR